【太陽光発電投資】FIP制度とは?仕組みやFITとの違いを解説

fip 太陽光

日本では、2030年に温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年までには温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げており、その目標達成には再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化が求められています。

2012年に導入された「FIT制度」は再エネを急速に拡大させる一つのきっかけとなりました。

しかし一方で、FIT制度の導入により、この後紹介する「賦課金」や、電力の需給バランス(バランシング)を考慮する必要のないFIT電源が増えてきたことによる需給調整上の課題が出てきました。

このような課題の解決に寄与し、再エネを電力市場へ統合するにあたっての段階的な措置として導入が決まったのが「FIP制度」です。

FIP制度は2022年4月から開始されました。

この記事では、FIP制度の内容や、FIT制度との違いについて解説します。

FIP制度の導入が決定した背景

2012年にFIT制度(固定価格買取制度)が導入されてから、太陽光発電所が増え、再エネの導入が拡大しましたが、一方でさまざまな課題も出てきました。

電力会社がFIT制度の再エネ電力を買い取る費用は「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せする形で国民のみなさんに負担していただいています。

しかし、再エネによる発電の普及が進むにつれて電力の買取も増加し、この賦課金の負担が大きくなっていることが課題となっています。

また、FIT制度においては、いつ発電しても同じ価格で買い取ってもらえるため、需給バランスや競争によって価格が決まる電力市場とは切り離された制度であることも課題の一つです。

今後再エネを主力電源としていくためには、火力などほかの電源と同じように、需給バランスなど電力市場の状況を踏まえた発電をおこない、自立した電源にしていく必要があります。

これらの課題を解決し、2030年度の温室効果ガス46%削減の目標に向けて、再エネの更なる導入を進めていくには、国民負担をこれ以上増やさずに、再エネ導入を拡大する必要があります。

そこで導入が決まったのが、FIP制度です。

FIT制度のように固定価格で長期間買い取るのではなく、FIP制度は電気の需給バランスによって変動する電力価格で買い取り価格が決定します。

将来的には、再エネを電力市場へ統合していくことが期待されています。

FIP制度は、再エネ自立化へのステップアップのための制度であり、電力市場への統合を 促しながら、投資インセンティブの確保と、国民負担の抑制を両立していくことを狙いとしている。

出典:経済産業省

FIP制度とは?

FIP制度とは「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称で、再エネ発電事業者が卸電力取引市場などで売電したとき、その価格に一定の補助額(プレミアム)が上乗せされる制度です。
FIT制度では、電力会社が再エネ電気を買い取る際の1kWhあたりの単価(調達価格)が定められていますが、これと同じように、FIP制度でも「FIP価格(基準価格)」が定められます。

補助額(プレミアム)の計算式は、以下となります。
「補助額(プレミアム)=基準価格-参照価格」

出典:経済産業省

▼FIP価格(基準価格)
発電所の建設コストや、発電事業を営む上で必要となる費用をベースに
毎年見直しが行われる。

▼参照価格
市場取引等により期待される収入。

このFIP価格(基準価格)と参照価格の差が「補助額(プレミアム)」となります。
つまり、再エネ発電事業者は、売電収入(市場取引等により期待される収入)にプレミアムが上乗せされた合計分を、収入として受け取ることになります。

参照価格はどのように決まる?

参照価格は、発電事業者が市場取引等により期待される収入だとお伝えしましたが、具体的にどのように算出されるのかご説明します。

参照価格は、次のようにして決まります。

「卸電力市場」の価格に連動して算定された価格 + 「非化石価値取引市場」の価格に連動して算定された価格 - バランシングコスト = 参照価格

電力の取引がおこなわれる市場としては「卸電力市場」のほか、「非化石価値取引市場」もあります。

非化石価値とは化石燃料を使わない方法で発電された電気の「CO2を排出しない環境価値」のことを指します。

FIT制度においては、再エネ賦課金によって消費者が費用を負担しているため、非化石価値は消費者に分配されていると考えられます。

したがってFIT電源から非化石価値を取り出して取引することができませんでした。

一方、FIP制度では市場および相対取引で売買されるため、非化石価値取引が可能になります。

続いて、バランシングコストについてです。

電気はためておくことができないため、常に需要と供給を一致させ、バランスを保っておく必要があります。

電気の需要と供給の不一致を「インバランス」といいますが、FIT制度では「インバランス特例」によってこの需要と供給の調整が免責されていました。

一方、FIP制度では、再エネ発電事業者は発電する再エネ電気の見込みである「計画値」をつくり、実際の「実績値」と一致させることが求められます。

これを「バランシング」といいます。

バランシングにあたり、計画値と実績値の差(インバランス)が出た場合には、再エネ発電事業者は、その差を埋めるための費用を支払わなければなりません。

これを「インバランスリスク」といいますが、太陽光発電や風力発電をおこなっている事業者にはかなりの負担となるといえます。

太陽光や風力は自然変動が大きく、事前の予測が難しいからです。

そこで、このインバランスリスクを軽減させるための経過措置として、変動電力である太陽光・風力発電において一定の額を交付することとなりました。

これを「バランシングコスト」といい、2022年度は1kWh当たり1.0円が交付され、翌年度以降は順次縮小されていくことになっています。

太陽光発電のFIP制度の対象について

現状では、FIP制度の対象となる太陽光発電は、50kW以上の高圧案件となっています。

出典:経済産業省

FIT制度とFIP制度の違い

FIT制度とFIP制度は、そもそも目的が異なります。

FIT制度の目的は、再エネの普及を促すことであったのに対し、

FIP制度の目的は、再エネの自立を後押しし、国民が負担する再エネ賦課金の問題を解決することです。

こういった目的の違いにより、FIT制度とFIP制度では異なる部分があります。

具体的に、FIT制度とFIP制度の違いを見ていきましょう。

売電収入の決まり方

FIT制度では、いつ発電しても同じ価格で買い取ってもらえることが保証されています(ただし、条件によっては出力制御もあります)。

一方、FIP制度では、卸電力市場および相対取引によって売電を行います。

価格は市場が決めますが、プレミアムによりFIT制度と同程度の収益が得られると考えられています。

インバランスの取り扱い

先にも説明しましたが、インバランスとは電気の需要と供給の不一致のことをいいます。

FIT制度では「インバランス特例」によって電気の需給バランスの調整をする必要がありませんでした。

しかし、FIT電源が増えて需給調整上の課題が出てきたことにより、FIP制度ではバランシングが求められます。

作成した計画値と実績値に差分が出た場合は、費用を支払う必要があります。

非化石価値取引

FIT制度では、FIT電源から非化石価値を取り出して取引することはできません。

一方、FIP制度では市場及び相対取引で売買されるので、非化石価値取引が可能です。

FIP制度が発電事業者に与える影響

FIP制度においては、再エネ発電事業者はプレミアムをもらうことによって再エネへ投資するインセンティブが確保されます。

さらに、電力の需要と供給のバランスに応じて変動する市場価格を意識しながら発電し、蓄電池などを活用して市場価格が高いときに売電するという工夫をすることで、より収益を拡大できる可能性があります。

また、FIP制度下では、多様なビジネスモデルの展開が考えられます。

例えば、FIP制度の下で、すべての再エネ事業者がバランシングを行うことができるとは限らないことから、発電事業者と需要家の間に入って、需給調整やエネルギーマネジメントを行う「アグリゲーター事業」の活発化が予想されます。

FIP制度によって、発電事業者には需給のバランシングが義務付けられましたが、小規模の事業者には大きな負担となります。

そこで、アグリゲーターが小規模の事業者を束ね、蓄電池などを活用して、バランシングの代行を行うのです。

FIP制度は、再エネの自立化の段階的な措置として、プレミアムの上乗せやバランシングコストなどの手当ても考慮されていることから、これらをインセンティブにして、再エネ発電事業者にとどまらず、新たなビジネスモデルの展開やさらなる再エネ導入が進むことが期待されます。

FIP制度が需要家に与える影響

需要家側(電気を購入する側)から見るとどうでしょうか?

近年、使用する電気が「再生可能エネルギーを実質100%使用」とうたう企業・団体が増えてきています。

環境に配慮した企業活動を対外的にPRしたい企業・団体は、非化石価値市場から非化石証書を購入することで、それを可能にします。

FIT制度の導入によって、これまでも再生可能エネルギーによる電源は拡大してきました。

しかし、FIT制度では再エネ賦課金によって、非化石価値は消費者に分配されていると考えるため、FIT電源を使用していても、それを再エネ電源として主張することはできませんでした。

FIP制度開始によって非化石価値市場が活性化することで、需要家が非化石証書を購入する機会が拡大することが予想されます。

まとめ

FIP制度は、市場連動した売電価格にプレミアムが上乗せされる制度です。

FIT制度であった問題を解消し、さらなる再エネの普及と、再エネの自立を目的として導入が決まりました。

FIP制度では、収益の予測が立ちにくいといったデメリットがあるものの、市場価格が高いときに売電するという工夫をすれば、高い収益を上げることができるというメリットもあります。

FIP制度は、50kW以上の高圧発電所が対象のため、太陽光発電投資の場合は、
FIT程度の、50kW未満の低圧発電所がおすすめです。

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